Kondo Lab
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3/16 2024
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金属イオンが有機分子に組み込まれることにより、金属イオンのみ、あるいは有機分子のみでは発現しない、非常に不思議な機能を発現することが知られています。最も分かり易い例は、金属酵素の活性中心に見られる金属錯体、あるいは実際に種々の機能ポリマーの合成に使用されている重合開始剤や、野依先生のノーベル化学賞受賞の対象にもなった不斉触媒としての利用に見られます。
とりわけ、この金属酵素の活性発現に関するメカニズムについては、未だ本質的なことがほとんど明らかとなっていません。金属錯体の魅力は、科学や技術の発展に伴い、身の回りの様々な現象が解明されていく中で、未だ明らかになっていない、つまり未解明の原理が多く残っているという点にあります。新しい原理を発見する夢を見ることができる科学の魅力がこの金属錯体の科学にあります。
当研究室は、2001年に発足し、設備もガラス器具も、あるいは反応試薬もほとんど無い状態から出発しました。文字通りゼロからの出発でした。その状況の中で、自由に、できる範囲のことをコツコツと展開して参りました。そして、この7年で非常に多くの発見がありました。
例えば、温度変化に応答してチャンネル構造を変化させる高分子錯体を世界で初めて合成することに成功しました。この動的チャンネルを利用することにより、低温で小分子をメカニカルの捕捉し、室温で放出させることが可能であることを報告して参りました。また、化学刺激に応答してチャンネル構造を変化させる化合物を用い、メタノールの添加により、第三の小分子の吸着を誘起させる世界で初の機能を実現しました。これ以外にも、6電子が同時に移動するナノサイズのクラスター型錯体、骨格のほとんどが空隙という非常に軽い多孔性固体などを見いだしています。最近では、銅イオンと有機化合物を組み合わせることにより、過塩素酸を選択的に捕捉除去する活性を有する新しいカプセル型金属錯体の合成に成功しています。いずれの研究においても、金属中心と小分子の相互作用が関与しており、触媒や金属酵素の機能解明につながる研究成果です。
これらの研究成果を得るに至ったのは、これまでに当研究室に配属して頂いた多くの学生、院生が、小さな発見を見逃さなかったことによると思っています。やみくもに実験するのでは無く、とにかく、一つ一つの実験を大事にして来てくれた研究室の学生、院生に感謝しております。これからも精力的に、ますます独創的な研究を展開していけるよう努力していければと思っております。
平成19年10月31日 近藤 満
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