シッフ塩基配位子を用いた金属錯体の合成と構造
シッフ塩基配位子を用いた金属錯体の合成と構造
一方、配位子として用いられるシッフ塩基の合成が比較的容易で、シッフ塩基配位子、金属錯体、
それぞれの構造の制御が簡単に行えるため、生体内での様々な反応に関わる金属酵素の活性中心モデ
ルとして、金属酵素の機能解明のために利用されています。
シッフ塩基はイミン骨格を持った、炭素–窒素二重結合を
持つ有機化合物で、このシッフ塩基を配位子として用いた
金属錯体は、オレフィン類のエポキシ化触媒、酸素などの
小分子の吸着など、工業的に広く用いられています。
イミン (imine)
窒素上の孤立電子対が配位子、ルイス塩基として作用
これらのシッフ塩基錯体の機能は、通常溶液に溶かした状態で研究されてきました。しかし、これ
らのシッフ塩基錯体を固体状態で用いることが出来れば、その回収と再利用が容易になるなど大きな
利点があります。
そのため、当研究室では、様々な構造を持ったシッフ塩基を配位子として用いることで、得られる
金属錯体の全体構造を制御した、新たな機能性固体の合成と性質について検討を行っています。
これまでに、水酸基を導入した salen 型配位子を用いることで、水素結合によって連結されたニッ
ケル錯体の全体構造や性質について明らかにしてきました。
また、二カ所で異なる金属に配位できるような配位サイトを導入した二座シッフ塩基配位子を用いる
ことで特異な四核構造を形成する銅錯体の合成と構造解析に成功しました。
水素結合によって連結されたニッケル salen 錯体の全体構造
四核構造を形成した銅 salen 錯体の構造
・ Y. Shibuya, K. Nabari, M. Kondo,* S. Yasue, K. Maeda, F. Uchida, H. Kawaguchi,
Chem. Lett., 2008, 37(1), 78-79. [DOI: 10.1246/cl.2008.78]
・ M. Kondo,* Y. Shibuya, K. Nabari, M. Miyazawa, S. Yasue, K. Maeda, F. Uchida,
Inorg. Chem. Commun., 2007, 10, 1311-1314. [DOI: 10.1016/j.inoche.2007.07.030]
・ M. Kondo,* K. Nabari, T. Horiba, Y. Irie, Md. K. Kabir, R. P. Sarker, E. Shimizu, Y. Shimizu, Y. Fuwa,
Inorg. Chem. Commun., 2003, 6, 154-156. [DOI: 10.1016/S1387-7003(02)00708-6]
“The Copper(II) Complex with Two Didentate Schiff Base Ligands. The Unique Rearrangement that Proceeds under Alcohol Vapor in the Solid State to Construct Noninclusion Structure”
~ Recent Papers ~
“New [2 × 2] Cyclic Framework that Induces Distortions from Square Planar to Tetrahedral around the Copper(II) Centers”
“Synthesis and crystal structure of [Ni{bis(2,5-dihydroxysalicylidene)ethylenediaminato}]: A hydrogen bonded assembly of Ni(II)-salen complex”